「ベースアップは一律にすべきか?」という議論がズレている理由

最近、クライアント企業でよく相談されるテーマがあります。

それが「ベースアップ(ベア)」です。

ニュースでは毎年のように大企業の賃上げが話題になりますし、社員からも「うちは給料上がらないんですか?」という声が出やすくなっています。

そのため、多くの会社が「ベアをどうするか」を考え始めています。

ただ、その議論の中でかなりの確率で出てくるのがこの質問です。

「ベアは一律がいいんでしょうか?」
「それとも年齢別に差をつけた方がいいんでしょうか?」

今日は、このテーマについて少し整理してみたいと思います。


目次

まずベアとは何か

最初に整理しておきたいのが、「ベアとは何か」です。

ベア(ベースアップ)は、基本給の水準そのものを引き上げることです。

昇給と似ているように見えますが、意味はまったく違います。

昇給は、評価や年次によって個人の給与が上がるものです。

一方でベアは、会社全体の給与水準を上げるものです。

つまりベアは、個人の評価とは関係なく「会社として給与水準をどう考えるか」という経営判断なんです。

この前提を理解していないと、ベアの議論はだいたい迷子になります。


一律ベアという考え方

まず、多くの会社が採用しているのが「一律ベア」です。

社員全員の基本給を同じ率、または同じ金額で引き上げる方法です。

例えば
全社員の基本給を3%アップする
全社員の基本給を月5,000円アップする
といった形です。

この方法の最大のメリットは、とにかく分かりやすいことです。

社員にとっても理解しやすく、不公平感も出にくい。

会社としても説明がシンプルです。

特に中小企業では、制度がシンプルであること自体が大きな価値になります。

複雑な制度は、作ることより運用することの方が難しいからです。

その意味では、一律ベアは実務的にとても扱いやすい方法と言えます。


年齢別ベアという考え方

一方で、もう一つよく検討されるのが「年齢別ベア」です。

例えば
20代は多めに上げる
30代はやや抑える
40代以上は据え置き

といった形で、年齢によってベアの幅を変える方法です。

この考え方が出てくる背景には、いくつか理由があります。

一つは、若手の採用競争です。

最近は新卒初任給がどんどん上がっています。

その影響で、既存の若手社員の給与が外部市場と比べて低くなってしまうケースが増えています。

そのため「若手の給与を重点的に上げるべきではないか」という議論が出てくるわけです。

もう一つは、ライフステージの考え方です。

結婚や子育てなど、年齢によって生活コストが変わるという考え方から、年齢別に上げ幅を調整する会社もあります。

実際、昔の日本企業ではこの考え方がかなり一般的でした。


ただ、実はそこが本質ではない

ここまで説明すると、多くの会社はこう聞いてきます。

「結局どっちがいいんですか?」

でも正直に言うと、ここは本質ではありません。

一律でもいいです。
年齢別でもいいです。

本当に大事なのは、

なぜそのベアにしたのか

という理由です。

会社としてどんな考え方でベアを決めたのか。

そこが一番重要なんです。


社員が見ているのは「考え方」

社員は、ベアの方式そのものよりも、会社の姿勢を見ています。

例えば

業績が良いのに何も還元しない会社

逆に

厳しい状況でも少しでも上げようとする会社

社員は意外とそこをよく見ています。

そしてもう一つ大事なのが説明です。

ベアは評価と違って、個人の努力だけでは説明できません。

だからこそ、会社としての考え方を伝える必要があります。

「会社としてどう考えて今回のベアを決めたのか」

これが説明されている会社は、納得感が高い傾向があります。


中小企業が気をつけたいこと

中小企業の人事制度を見ていると、よくあるのが「制度を複雑にしすぎる」ことです。

年齢区分を細かく分ける。

等級ごとにベア率を変える。

例外ルールを作る。

こうして制度がどんどん複雑になります。

でも実際には、社員の多くはそこまで細かいロジックを理解していません。

むしろ
「なんだかよく分からない制度」
になってしまうことの方が多いんです。

制度は、シンプルなほど運用しやすい。
これは人事制度全体に言えることです。


ベアは経営メッセージでもある

人事コンサルとして企業を見ていると感じることがあります。

それは、ベアは単なる給与調整ではないということです。

ベアは、会社のメッセージでもあります。
社員に対して「会社はどういう考えで経営しているのか」
それが表れるのがベアです。

若手に投資する会社もあれば、全体に広く還元する会社もあります。

どちらが正しいということはありません。
大切なのは、会社として一貫した考え方を持つことです。


制度よりも「納得感」

人事制度の相談を受けていると、経営者はつい「制度設計」に意識が向きがちです。

どんな計算式にするか。
どんな区分にするか。

でも実際に社員が感じているのは、そこではありません。

社員が感じているのは、
「会社はちゃんと考えてくれているのか」
という感覚です。

制度がどれだけ精密でも、その感覚がなければ納得感は生まれません。

逆に言えば、制度がシンプルでも、考え方が伝わっていれば納得されることも多いんです。


ベースアップは、社員にとって非常に関心の高いテーマ

だからこそ、単なる給与調整として扱うのではなく、会社の考え方を整理するきっかけにすることが大切です。

一律か、年齢別か。

それも大事な議論ですが、もっと大事なのは

会社としてどういうメッセージを社員に伝えるのか。

ベアは、そのメッセージが一番分かりやすく表れる場面なのかもしれません。

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