社長が見ている会社と、現場が見ている会社は別物です

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「うちは良くなっている」という感覚

先日、ある会社に訪問したときのことです。

打ち合わせの冒頭で、社長がこう話してくれました。

「うちはね、だいぶ良くなってきてると思うんですよ。人も育ってきてるし、組織としてもまとまってきた感覚があります。」

穏やかな表情で、少し安心したような口調でした。

実際、その会社は人事制度も整ってきています。評価制度はここ1〜2年で見直され、目標設定の仕組みも導入されていました。

いわゆる「制度としては整っている状態」です。

だからこそ、社長の中では「会社は前に進んでいる」という実感があったのだと思います。


現場で聞こえてきた“別の声”

ただ、そのあと現場のマネージャーやメンバーと話していく中で、少しずつ違和感が出てきました。

「正直、評価って何を見られているのかよく分からなくて…」
「目標は立てているんですけど、結局振り返りはあまりなくて…」
「上司によって言うことが違うので、どれが正解なのか分からないです」

出てくるのは、こんな声でした。

制度はある。
でも、使われていない。

正確に言うと、「現場の中で意味を持っていない状態」です。


見えている景色が違うだけ

このとき、改めて感じるのが、社長が見ている会社と現場が見ている会社は、全く違うということです。

社長から見れば、制度を整えた。評価の仕組みも作った。目標設定もやっている。

だから、「会社は良くなっている」と見える。

でも現場から見れば、その制度が日々の仕事にどうつながっているのかが分からない。評価の基準も曖昧。運用もバラバラ。

だから、「何も変わっていない」と感じている。

どちらが正しいか、ではありません。

見えている景色が違うだけです。


ズレが生む“静かな停滞”

ただ、このズレを放置すると、確実に組織はうまくいかなくなります。

なぜなら、社長は「うまくいっている前提」で意思決定をしてしまうからです。

一方で現場は、「うまくいっていない前提」で仕事をしている。

この状態になると、まず改善が進みません。

社長は「もう整っている」と思っているので、次の打ち手を打たない。現場は「そもそも機能していない」と思っているので、主体的に動かない。

結果として、制度だけが“置き物”になります。


不満は静かに積み上がる

さらに厄介なのは、ここからじわじわと不満が溜まっていくことです。

評価に納得感がない。
頑張っても報われている感じがしない。
上司によって言うことが違う。

こうした小さな違和感が積み重なっていくと、ある日突然「辞めます」と言われることになります。

しかも、社長からすると“突然”です。

「え、なんで?」
「うちは環境も整えてるのに」

そう思ってしまう。

でも現場からすると、突然ではありません。ずっと感じていた違和感の積み重ねです。


なぜズレは起きるのか

このズレが怖いのは、お互いに悪気がないことです。

社長は会社を良くしようとしている。現場もちゃんと仕事をしようとしている。

それでもズレる。

なぜか。

それは、情報の通り方にあります。

現場の情報は、上に上がるにつれて“整理”されます。時には“遠慮”も入ります。

結果として、社長に届く頃には、少し綺麗な状態になっている。

一方で、制度や方針は上から降りてくるときに、現場ごとに“解釈”されます。

つまり、上に上がるときも、下に降りるときも、少しずつズレていく構造なんです。


ズレを埋めるためにやるべきこと

ではどうするか。

答えはシンプルで、「同じ景色を見る時間を意図的に作ること」です。

例えば、評価のすり合わせ。

評価会議を「点数を決める場」にするのではなく、「評価の基準を揃える場」に変える。

なぜこの評価なのか。どこを見てそう判断したのか。他のマネージャーはどう見ているのか。

こうした対話を重ねることで、少しずつズレは埋まっていきます。

また、現場の声をそのまま聞く機会をつくることも重要です。

サーベイでもいいですし、直接ヒアリングでもいい。

大事なのは、「加工されていない声」に触れることです。


制度は“作ってから”が本番

そしてもう一つ大事なのは、制度を「作ったあと」にこそ時間を使うことです。

多くの会社は、制度を作るところに力を入れます。

でも本当に重要なのは、その後です。

現場でどう使われているのか。ちゃんと理解されているのか。ズレが起きていないか。

ここに目を向けない限り、制度は機能しません。

むしろ、誤解されたまま運用されることで、逆効果になることすらあります。

制度は完成した瞬間がゴールではなく、“スタート”です。


見えていなかっただけ

今回の会社でも、社長に現場の声をそのまま共有しました。

少し驚いた表情をしながら、こう言っていました。

「正直、ここまでズレているとは思ってなかったです」

でも、ここに気づけたのは大きいです。

ズレは悪いことではありません。

見えていなかっただけです。

見えた瞬間から、直せるようになります。

組織がうまくいくかどうかは、制度の良し悪しだけでは決まりません。

どれだけ同じ景色を見られているか。

ここが揃ったとき、はじめて制度は“意味を持つ”ようになります。

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